自閉症の方の優しさに触れて・・
私が以前、勤務したところの話です。知的障害者施設の
指導員で、仕事や生活全般の支援をしていました。
そこで出会った自閉症のSさん。
重度の自閉症で、他者とのコミュニケーションが全く
とれず、相手の気持ちや感情を理解することが難しい
方でした。私が作業を持ちかけても、いつも雑誌を手
に持ち、作業にとりかかるそぶりもなく、「無視」
され続けました。作業が嫌になると布団をかぶり、
いわゆる「カメ」のように、閉じこもるような状態でした。
ご家族からは、人と関わるのが苦手なので仕方ないが、
優しいところもある、と聞いていたのであきらめずに、
半年近く支援を続けていたところ、私が体調を崩し、
洗面台で嘔吐してしまいました。それを見てSさんがとった行動は・・・
「ふん!」と私の腕を強くつかみ、Sさんの布団の上に
寝るようにと示し、布団をバッとかけました。
私が布団から出ようとすると、「ふん!」と布団をかぶせて、「寝る
ように」と言われているような感じでした。最初は、何が起きたのか
わかりませんでしたが、臭い布団(笑)の中で考えて、もしかしたら
Sさんが、体調を崩した私を心配して寝るように、と行動を起こした
のでは、と思い、Sさんの優しさに触れて、自然と涙があふれてきま
した。自閉症の方が、他者を心配して行動を起こすことは、非常に
難しいことでしたが、私のために布団をかけてくれました。
その出来事以降、真剣に作業に取り組んでくれるようになったSさん、
いまでも私の心の支えになっています。 生活相談員より