楠清里苑では毎月、施設内勉強会を行っています。2月は高齢者疑似体験でした。普段、介護の仕事をしている職員ですが、意図的に身体機能を低下させ、介護される側の視点に立ちます。
肘、膝、手首、足首などに重りをつけ、重さ5㎏のベストを着ます。想像以上に負荷がかかり、一気に動きにくくなりました。
さらにヘッドホンで聞こえにくくし、白濁・視野狭寥・黄変などのゴーグルをつけ視界を悪くします。利き手には手袋を3枚重ねて、体中の動きを制限しました。
体中に負荷がかかるので、イスから立ち上がるだけでも一苦労です。自分の体じゃなくなってしまったかの様に体が動かず、歩行は杖がないと難しい位でした。
特に階段のような段差を怖く感じました。視界が悪いので下がほとんど見えず、降りる時は踏み外して転ぶのではないかという怖さがあり、誘導と介助がなければ足が前に出ませんでした。
物を拾いあげようとすると、膝が曲がりにくく、ベストの重りで体が前のめりになり転びそうになります。重ねた手袋のせいで指が動かしにくく、なかなか拾えません。
黄変のゴーグルをつけると黄色が白色に見えてしまいました。他の色もよく見なければ判断しにくく、信号などの見落としにつながるのではという事が想像できました。
普段、介護の仕事をしている職員ですが、行動を制限されてみると、体が動かしにくい事へのもどかしさや、自分の感覚とのずれへの戸惑いなど「動く」という事への意識を再確認できました。また、介助してもらう事の安心も感じることができ、少しですが介助される側の気持ちに立つことができました。介護技術の向上も大事ですが、気持ちを理解するという大切な学びができた様に思います。